※このお話は、こちらのサイトの実験室の01番の続きのイメージとなっております。
その為、単品でも読めるとは思いますが、こちらを読んだ方がより楽しめると思います。


[ 離別と決意 ]
(ラーライトIF小話01)

腕の中で眠る大切な人。
突然居なくなってから、ずっと、ずっと待っていた彼。

「…フィーリー…急に居なくなるんだもの、心配…したのよ」

永久の眠りについた彼に、ただただ優しく。
自分の声が彼の耳に届く事はないとわかっていても、認めたくなくて語りかける。
認めてしまえば、それで終わってしまう気がして。
それが怖くて、そっと髪を撫でながら声をかけ続ける。
眠りにつく彼が、今にも眼を開けて照れくさそうに笑い掛けてくれそうで。

「ほんと…大事なこと、言わないんだから…」

溢れる涙もそのままに、二度と目覚める事のない彼に凭れて目を閉じる。
少しずつ失われる温もりが、現実を突き付けてくる。
彼の身体は機能を停止し、もう動く事は無い。

照れくさそうに笑う姿も、やさしいその両手で抱きしめてくれる事も。

「…フィーリー…っ」

認めたくないけれど、頭が理解し出してしまったら止まらなかった。
ずっと堪えていた感情が、涙と共に溢れだす。

「起きて…起きてよ…フィーリー、目を…開けて…。
嫌よ…独りに、しないで」

彼の亡骸に縋りついて慟哭する。
神様とやらは、どうしてこうも私に優しくないのだろう。
沢山話したい事も、一緒にしたい事もあったのに。
待ち続けてきた結末がこれだなんて、あんまりだ。
泣いて、泣いて、枯れるほど泣いても涙は止まらなくて。
ようやく落ち着いてきたのは、朝日が昇ってくるころだった。

「…終わりになんて、しない…」

彼だって、戻ってくると約束してくれた。
私が、立ち止まっていてはいけない。
眠るように旅立った彼の唇に、一度だけ唇を重ねそっと微笑む。
近くの森に亡骸を弔い、自らのお気に入りだった月桂樹の冠を傍らに。

「また、ね…フィーリー」

一度振り返り、その場所に声をかければもう振りかえらないと決めて。
再び出会える時を信じ、歩きだす。
遺してくれた帽子を被り、サングラスを胸元に掛ける。

歩きだした道が、再び彼に繋がっている事を信じて。

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