ACアリーナの横にある控え用のガレージ。 格納されている機体は先ほど試合を終えたばかりで未だ僅かながら煙が上がっている。 基本色は黒で、関節部が赤く塗られた四脚機体。 "シュヴァルツ・シュピンネ" かつてドイツと呼ばれていた地方で使われていた言葉で、黒い蜘蛛を意味する機体名。 蜘蛛のような見た目のインパクトと、その名があまりにぴったりだったので記憶に残っていた。 最近になって名を上げ始めたレイヴンの物だった気がするが、咄嗟に出てこないあたりまだ大したランクではないのだろう。 その機体に近づく二人の男に気づき、疾しい事をしているわけでもないのに思わず息をひそめた。 「これは何番目だ」 「12番目だったか。それなりに優秀だったがこうなっちゃもう使い物にならんな」 聞こえてきた不穏な会話に、思わず物陰から二人の様子を覗き見てしまった。 コックピットを開き、中へと一人が入っていく。 中から出てきた人物の腕には、黒い髪の少女が抱きかかえられていた。 だがその様子は尋常ではなくだらりと両腕を垂らし意識を失っているかのようで、一見すれば死体のようにも見えた。 どう見ても真っ当で無い様子に、小さく息を飲む。 「このままこいつも破棄か、次のを起こすよう本社に連絡しないとな」 携帯電話を取り出して、機体の傍らに居る男がどこかへと電話をかけはじめた。 その様子を眺めながら思案する。 機体から運び出された彼女は何者なのだろうか。 12番目とはいったいどういう意味か。 本社とはいったいどこの会社の事なのか。 考えれば考えるほど、マズイ状況を見てしまったのではないかと思えてくる。 先ほどの会話から考えるに、どうやら彼女の存在は表沙汰になってはいけないもののようで。 だとすれば、これを知ってしまった自分はいったいどうなるのか。 そこまで考えて、近づく足音に気づいて振り返る。 ――そこには、私に銃口を向ける誰かの姿があった。 |
-キーワード的なもの- AC、黒い蜘蛛、12番目 いつか書けたらいいなと思ってる、クローン的主人公のお話。 戦闘描写は苦手です…ぐぬぬ。 [更新日:2012/4/7] |