黒いブレザーに黒いスカート、白の靴下にローファー姿はいかにも学生といったもの。
そんな姿の少女が一人、少し息を切らせながら市街地を走る。
その背には得体の知れない"何か"が迫り、少女は時折ポケットから小石を取り出し、それを投げて"何か"を牽制する。
小石は追いかけてくる"何か"の前に落ちると蔦のように氷が伸びて動きを阻害した。
少女は自分が戦うのに最良の場所を探す様に左右へと視線を動かすが、走る足は止まることはない。
何度か角を曲がり、少々開けた公園が目に入ればそこへ"何か"誘導するように駆けこんだ。
広さが確保できると判断すれば、自分を追っているであろう"何か"と対峙するために向き直る。

「戦闘システム起動、ターゲット確認」

少女の抑揚のない声が夜の闇に溶けるように響き、少女を中心に青い光の筋で描かれた魔法陣が展開される。
異界の言語で描かれたそれは、展開された直後にまばゆい光を放ちだす。
魔法陣から解放される魔力が風のように少女の服を揺らし、髪を乱し、辺りの木々を震わせる。
地面が僅かに揺らぎ波紋が広がれば、波紋の中心から一本の刀が現れ、少女は躊躇う事なくその刀を手に取った。
その直後、追いついた"何か"が少女に向けて突撃を仕掛けてきた。
急いで腰のベルトに刀を差して簡単ではあるが固定し、左手で鞘を押さえながら素早く刀身を抜き放つ。
刀で切りかかろうと横薙ぎに振るったが、刃が当たる直前で"何か"は身を引き難を逃れる。
そこでようやく確認する、自分を追っていた存在。
真っ黒な黒い霧、まるで闇で覆われたような中にぼんやりと浮かぶ瞳らしき一対の赤い光。
一点に止まりゆらゆらと揺れながら形を変え、並んだ赤い光がゆっくりと斜めに傾ぐ。
まるで少女の行動に疑問を抱き、首を傾げているかのように。

「基本構成組織解析――…」

刀を構えつつ左目に小さな魔法陣を展開し、それで黒い霧を解析しようと視線を鋭く見据える。
成分、それに基づいて予想される耐性、基本四元素での属性、聖魔どちらの性質であるか。
一つ解析が終われば眼前に展開された陣は何度もその形を変え、目の前のモノの正体を暴いていく。
解析された内容は術式により直接記憶に刻まれ、そのたび頭に微かながらチクリとした痛みが走る。
僅かに眉を顰めた瞬間、少女へと無数の手のようなものがその身を絡め取ろうと伸ばされた。
だが少女は動じることなく刀の柄を強く握り、そのまま地面を蹴り後ろへと飛びながら自らに届きそうな手だけを切り払う。
切られた手は地面へと落ちる前に霧散し、本体へと戻っていく。
尚も無数の手は少女を掴み絡め取ろうと伸ばされ、少女は防戦一方といった様子。
何度伸ばされる手を切り落としたか分からないが、不意に少女の唇が僅かに弧を描いた。

「解析完了…――ターゲット、排除開始」



<まだ続き書くよ、多分>




*あとがき* 機械的に戦う子が書きたかった。
書きたかったけど、戦闘に至っていない不具合。
ひっそり、倉佳宗氏のディアブロマタルと同一の世界観のつもりだったりする。
ちなみに無許可、ごめんなさい。
親馬鹿全開だけど、オリヴィニス可愛いよオリヴィニス。
自キャラで一番戦闘に変化をつけられる子だと思ってるこの子。
いずれ小話の中でも使ってあげたいわぁ…。
[更新日:2012/4/28]


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